前回の2022年以降のアセアン株投資は検討すべき?東南アジア諸国連合の概要と今後の発展、おすすめできる投資対象(高配当銘柄、ETF、楽天証券で買える?)でASEANの概要をお伝えしてきました。
今回はさらに深掘りして、ASEANの経済概況、今後の経済成長可能性について解説していきたいと思います。
高い成長力を維持するAC(ASEAN経済共同体)
投資を検討する上で、最も重要なのが今後の「経済成長力」ですよね。AEC(ASEAN経済共同体)の定義と加盟国を今一度確認しておきましょう。
ASEAN加盟国が経済圏として発足しましたので、「ASEAN」=「AC」と考えて問題ありません。
ASEAN経済共同体
ASEAN経済共同体(AEC:ASEAN Economic Community)とは、ASEAN加盟10カ国(インドネシア、カンボジア、シンガポール、タイ、フィリピン、ブルネイ、ベトナム、マレーシア、ミャンマー、ラオス)が一つの経済圏となること。通貨統合は目指さず加盟国の主権を優先する一方、関税を撤廃し、サービスや投資の自由化などを図ることとしている。2015(平成27)年11月21日のASEAN首脳会議で確認され同年末に発足した。
引用:ASEAN経済共同体
国際通貨基金(IMF)によると、今後のAECの経済成長は2016年の4.6%からさらに上昇し、2017年〜2021年平均成長率は5.2%となると予測されています。
また、以下はASEAN5の成長も住友商事で予測資料が作成されています。
ASEAN5は以下の5カ国です。
- インドネシア、
- タイ、
- マレーシア、
- フィリピン、
- ベトナム
CLMとは、以下の3カ国のことです。
- カンボジア、
- ラオス、
- ミャンマー、
こちらはCovid -19パンデミック前の予想値ですが、経済成長率7%で推移するインドには差をつけられていますが、経済成長が減速している中国との差は縮まるばかりでした。
実際にパンデミックの収束具合と、米国の不況観測などから、ASEAN一括で語れるフェーズではなく、各国の経済ファンダメンタルズをここから5年は冷静にみていく必要があると思います。
以下のGDPは2019年時点のものなので本当に参考までです。
AECの経済成長を支えているのはどこの国?
AEC加盟国は計10カ国、つまり経済成長の速度にもバラツキがありますよね。
では、どこの国がACの経済成長を支えているのでしょう?
投資を考えるのであれば、お荷物になっている国を選んではいけませんね。それぞれの国を分析する必要があります。
現状私が解説している新興国記事は以下になりますので参考にしてみてください。
2000年前半から2010年までのAECの経済成長の牽引役はマレーシア・タイでした。
しかし、中国経済への輸出依存度が高く、政治問題もあり、知識集約型の産業転換に少し手こずっている点から、経済成長率は徐々に鈍化してきています。
この状況を鑑み、今後の経済成長を索引するのはインドネシアとフィリピンと言えるでしょう。
両国は「モータリゼーション」が加速する水準である「1人当たりGDP3,000ドル」を突破しました。
モータリゼーション
先進諸国などで自動車が単に輸送機関としてだけでなく,市民生活の中に入り込んできている文化的・社会的状態。
自動車の大衆的普及は高度消費時代の象徴ともされているが,これにより旅行その他のレジャーから通勤に至るまで,自動車が活用され,〈マイカー〉という和製英語に端的に示されるように生活に密着する。
個人の機動性が高まり活動範囲が拡大されるとともに,真の大量消費社会が出現する,とされる。
これとともに道路交通をはじめとする都市問題,公害問題などが自動車を除外しては考えられなくなる。日本では1960年代からモータリゼーションの進行が著しいのに対し,環境整備の立遅れが目立っている。
今後は自動車産業を始めとし、インフラ整備に対する対内投資が加速すると見られています。次世代で成長していくのが、インドシナ半島で1.7億人の人口を構成するCLMV(カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム諸国)になり、2022年時点の経済成長率もパンデミックから復活の兆しを見せています。
賃金が高騰してしまった中国などアジア諸国から、低賃金であるCLMVに繊維・製造など労働集約型産業に対内直接投資が増加しており、今後もさらなる経済成長が予測されています。中国は公益企業とハイテクの2大産業で今後は伸びていくでしょうね。
ACの人口規模・理想的な人口構造?
上記でも掲載した資料になりますが、インドネシア、フィリピンの人口が魅力的ですね。
懸念されるのがパンデミックの影響による人口増加率の推移です。当然ですが、世界中で増加率は減少しています。成長率確保のために、テクノロジー、国家の適切な対応が求められます。
その点、テクノロジーの発展もまだまだ、豊富な資金量があるわけではない政府が舵を取る新興国諸国は苦労する部分がもしかしたら出てくるのかもしれません。
こればかりは続報を待ちたいところです。
政治面の懸念は、EUのようにイギリスが脱退したい!と表明して経済停滞が始まったりする政治的な部分です。
しかし、ASEAN諸国は基本原則である主権・領土保全の相互尊重、内政不干渉、紛争の平和的解決といった基本精神を掲げ、加盟国同士の紛争は現状起こっていません。
多様な民族、且つ言語も全く異なる国々なのに、と思いがちですが、意外とシンプルに英語で必要なこと、必要ではないことのみの議論は捗るものです。
EUはそれぞれの言語が近い部分ありますから、反対に険悪な仲を生んでしまう脆さもあると勝手に推測しています。
それでは本題と言える人口ピラミッドを見ていきましょう。以下は2015年時点の少し古い、日本との比較資料ですが、そこまで劇的に変わるものではないので掲載します。30歳未満が50%を超える水準であり理想的です。
引用:みずほ証券
内需の拡大に重要な「中間所得層」の増加推移も、インドネシアを中心に増加中であり、今後も増加していきます。
引用:みずほ証券
実際には、ASEAN諸国の中でも人口ボーナスを終えた国はあるのです。例えば、最近まで発展著しかったタイやベトナム、遅れてインドネシアですね。
人口ボーナス
生産年齢人口(15〜64歳)に対する従属人口(14歳以下の年少人口と65歳以上の老年人口の合計)の比率が低下し、経済成長を促すこと。人口ボーナス期では豊富な労働力を背景に個人消費が活発になる一方、高齢者が少なく社会保障費用が抑えられるため、経済が拡大しやすい。逆に従属人口の比率が相対的に上昇することを人口オーナスという。
引用:野村証券
人口に依存した経済政策だけでは、直近、先5年の経済成長は角度が高いですが、その後の知識集約型への転換を如何に適切に実行できるかがどこの国も鍵になってきます。つまりは中所得国の罠から如何に早く抜け出せるかですね。
中所得国の罠とは
20年間にわたる実質10%台の高度成長の結果、中国の一人当たりGDP1別ウインドウで開きますは11年には7,800ドルに達している。
現在の実質経済成長率は7%台にまで低下しており、一人当たりGDPの伸びは11年に5%程度に低下しているが、単純計算によれば、仮にこうしたペースの成長が続けば17年には1万ドルに達することになる。
ここ数年の成長率の低下と、1万ドルといった高度成長経路の区切りから、中国の成長力をめぐっては、「中所得国の罠」を回避できるのかが問われる状況になっている。
引用:内閣府
「中所得の罠」の水準までは単純作業を中心とした労働集約型産業で経済成長をしますが、産業自動車・IT産業などのハイテク分野へ知識集約型として転換が必要になるということです。
・・・とはいえ、まずはパンデミックからの回復が先決ですね。現在はASEANのポテンシャルが見えづらく、個別の国で見ていくしかない状況です。株価指数ではなく、個別株の方が今は投資環境としてわかりやすいというようなイメージです。
アセアン5の株価指数から株式市場の状況を確認
以下の国の指数を俯瞰してみましょう。
- インドネシア(IDX COMPOISTE)
- タイ(SET)
- マレーシア(FTSEブルサ・マレーシアKLCI)
- フィリピン(PSE Composite Index)
- ベトナム(VNINDEX)
以下は年初来の各指数の動きですが、インドネシア総合指数以外はマイナスに転じています。
一番酷いのはベトナム、次いでフィリピンです。米FRBの金融引き締め推進により、米国株も大きく下落していることから、そのお煽りを受けるのは当然です。
しかし、本当に強い株式市場を持つ、また株価が上昇する国は下落幅も小さいはずです。
上記ではインドネシア、タイ、マレーシアに妙味があることがわかります。
フィリピンが想像以上に打撃を受けていました。やはりアセアンの中で選ぶとすれば、インドネシアの株式市場の中で個別株を選んでいく感じでしょうか。
まとめ
AECは高経済成長率、理想的な人口ピラミッドを形成しており今後の経済成長は高い角度で達成されることが見込めます。但し、投資を考えるにも、各国の分析は必須です。
上記で掲載したASEAN+新興国各国の経済分析記事はぜひ、参考にしてみてくださいね。
国のファンダメンタルズとコンディションの良い株式市場の2点が新興国投資では特に必要です。