カンボジアは株式投資を行う国として魅了的?政治・経済のファンダメンタル面から分析する。

カンボジア株式市場(CSX index)

カンボジアは株式投資を行う国として魅了的?政治・経済のファンダメンタル面から分析する。

これまでも様々な新興国株式銘柄を紹介してきましたが、今回はカンボジアの株式投資を取り上げたいと思います。

カンボジアと言えば、アンコールワットで有名ですよね。私も4年前ほどに海外出張で首都・プノンペンに行ったことがありますがまだまだ経済発展もはこれからだなという印象が強かったです。

 

当時は主な交通手段は「トゥクトゥク」で、道も整備されておらずガタガタでしたが、人々は活気に満ちていて、新興国のポテンシャルを大いに感じました。

今回はそんなカンボジアが本当に経済発展していくのか、投資家としての観点から投資すべき国なのかどうかを書いていきたいと思います。

 

カンボジアの概要

まずはざっくりとカンボジアという国の概要を見ていきましょう。

 

カンボジア一般概要

国・地域名 カンボジア王国 Kingdom of Cambodia
面積 18万1,035平方キロメートル(日本の約2分の1弱)
人口 1,530万人(2019年、出所:カンボジア計画省統計局)
首都 プノンペン(人口:212万9,000人(2019年、出所:同上))
言語 クメール語(97.05%) ほかに少数民族言語(2.26%)、ベトナム語(0.42%)等
(2013年、出所:同上)
宗教 仏教(97.9%) ほかにイスラム教(1.1%)、キリスト教(0.5%)等
(2013年、出所:同上)
公用語 クメール語

引用:JETRO

 

人口は1500万人しかいません。国土が日本の1/2。日本は密度の高い国ですので、比較するのもあれですがもう少し人口が増えてきても良さそうですね。面積に対して話すのもなんなのですが。

十分人が増えても住むスペースは沢山あるということで。

 

 

カンボジア経済概要

項目 2018年 2019年 2020年
実質GDP成長率 7.53(%) 7.05(%) △3.53(%)
(備考:実質GDP成長率) 推計値
名目GDP総額 24.4(10億ドル) 26.7(10億ドル) 26.0(10億ドル)
(備考:名目GDP総額) 推計値
一人当たりの名目GDP 1,578(ドル) 1,713(ドル) 1,655(ドル)
(備考:一人当たりの名目GDP) 推計値
鉱工業生産指数伸び率 n.a. n.a. n.a.
消費者物価上昇率 2.46(%) n.a. n.a.
失業率 n.a. n.a. n.a.
輸出額 12,739(100万ドル) 14,866(100万ドル) 14,785(100万ドル)
(備考:輸出額) 通関ベース(FOB) 通関ベース(FOB) 通関ベース(FOB)
対日輸出額 1,076(100万ドル) 1,140(100万ドル) 1,069(100万ドル)
(備考:対日輸出額) 通関ベース(FOB) 通関ベース(FOB) 通関ベース(FOB)
輸入額 18,131(100万ドル) 21,058(100万ドル) 20,298(100万ドル)
(備考:輸入額) 通関ベース(CIF) 通関ベース(CIF) 通関ベース(CIF)
対日輸入額 736(100万ドル) 888(100万ドル) 764(100万ドル)
(備考:対日輸入額) 通関ベース(CIF) 通関ベース(CIF) 通関ベース(CIF)
経常収支(国際収支ベース) △2,896(100万ドル) △4,065(100万ドル) △3,076(100万ドル)
貿易収支(国際収支ベース、財) △5,844(100万ドル) △7,255(100万ドル) △3,593(100万ドル)
金融収支(国際収支ベース) △3,652(100万ドル) △6,370(100万ドル) △3,863(100万ドル)
直接投資受入額 3,213(100万ドル) 3,663(100万ドル) 3,625(100万ドル)
(備考:直接投資受入額) フロー、ネット フロー、ネット フロー、ネット
外貨準備高 13,373(100万ドル) 17,033(100万ドル) 18,564(100万ドル)
(備考:外貨準備高) 金を除く 金を除く 金を除く
対外債務残高 43,489(100万ドル) 49,364(100万ドル) 54,518(100万ドル)
政策金利 n.a. n.a. n.a.
対米ドル為替レート 4,051(リエル) 4,061(リエル) 4,093(リエル)
(備考:対米ドル為替レート) 期中平均値 期中平均値 期中平均値

引用:JETRO

 

カンボジアは一人あたりGDPが1,655USDとなっています。筆者がカンボジアを昔調査していた時は1,230USD(2016年)だったので、成長しましたね。

 

2020年のGDP成長率はパンデミックの影響もありマイナスとなっていますが、その前までは7%台で推移していました。2021年の成長率(推定)も2.2%、2022年は世界銀行予測では4.5%と予測しています。

世界銀行は1月11日発表の「世界経済見通し(GEP)」の中で、2022年のカンボジアの実質GDP成長率を前年比4.5%と予測。一方で、新型コロナウイルス感染再拡大のリスクや、観光業、建設業、不動産業などのサービス分野での回復の遅れにより、前回発表(2021年6月)から予測値を0.7ポイント引き下げた。また、2023年については5.5%と予測し、前回発表から0.5ポイント引き下げた。なお、2021年の成長率(推定)も2.2%と、1.8ポイント引き下げた。

JETRO

 

今後発展のポテンシャルを秘めるアジア最貧国の一つだけあり、いち早く経済回復が見込まれている点が、まだまだ成長余地が高いことが伺えます。

 

1人あたりのGDPの低さが一際目を引きます。GDPの水準に関しては、意外にもカンボジアの歴史が影響しているのです。「ポル・ポト政権」という単語を聞いたことがありますでしょうか?

ポル・ポト政権下の虐殺と反ベトナム政策

同政権下では、100万とも200万とも言われる自国民の虐殺が行われ、類を見ない「恐怖政治」が国内外を震撼とさせました。帰国したシハヌーク殿下も幽閉されます。ポル・ポト政権幹部は、思想的に文化大革命当時の中国に大きな影響を受けたと言われておりました。また、ポル・ポト政権は、ベトナム戦争終結後、ソ連に接近したベトナムに対しても、伝統的な反越感情と相まってあからさまな敵対政策をとります。

引用:外務省

 

カンボジアは1975年-1979年のポルポト政権時に当時の同国の人口700万人に対して200万人が虐殺されました。その中でも医者や教師、知識人が優先的に殺されてしまいました。

原始共産主義者だったということですが、この時代は凄惨を極め「眼鏡を掛けて本を読んでいる」だけで兵隊に捉えられ、酷い拷問を受け殺殺害されるということが日常的に行われていました。

 

この時代に、経済の発展を担う知識人が優先的に殺されてしまったことが、カンボジアを停滞させた主な要因とされています

詳細を知りたい人は首都プノンペンの「トゥール・スレン」を訪れてみると良いでしょう。虐殺犯罪博物館として、当時の様子がわかります。私は言葉を失いました。

 

 

カンボジアの経済成長水準は?

さて、話を戻しまして、カンボジアの過去の経済成長率の推移を見ていきましょう。

カンボジアGDP推移

引用:World Economic Outlook Database, October 2017を元に筆者が作成

 

2000年代後半は10%以上のGDP成長率を誇りましたが、リーマンショックを機に落ち込み、その後は7%ほどの成長で推移していました。

しかし、コロナパンデミックの影響もあり、IMF予想で2022年より本格的に経済回復するとされています。

 

次はカンボジア経済の成長の鍵を見ていきます。以下はGDP産業別を表したグラフです。

産業別GDP構成比(2000年と2020年の比較)

2000年時点で農業が38%でしたが2020年には24%となっています。工業化フェーズへ移行しています。サービス業は増加していないので知的産業へのシフトはまだまだですね。

とはいえ既に39%は非常に高く、これは観光地であるアンコールワットへの観光客が大きく増加していることが要因となりますね。

 

2000年の観光客は約47万人でしたが、2016年には500万人まで増加しており、観光収入が右肩上がりとなっています。2020-2022年の状況はパンデミックの影響で中国も閉鎖している点から、まだ信頼のおけるデータはありませんが、2023年から観光客は戻ってくるだろうと思われます。

 

カンボジア旅行者数推移

 

カンボジアのようにまだまだ経済規模の小さい国では、観光収入が大きな意味をもちます。観光業で稼ぎつつ、工業、知識産業へ経済成長していくのがカンボジアの勝ち筋でしょう。

 

 

カンボジアの人口ピラミッド

まず、今後の経済発展を分析するにあたり重要な指標であるカンボジアの人口を見ていきましょう。

カンボジア人口ピラミッド

カンボジアの人口ピラミッドは理想に近い形とも言えるのですが、ボリュームゾーンが0-4歳、5-9歳、20-24歳、30-34歳に集まっていますね。

高齢者が異常に少なく、若年層が非常に多い構造です。これはポル・ポト政権時代に高齢者が大量に虐殺されたのも影響しています。背景は暗いですが、経済成長には非常にポジティブな構造です。

 

カンボジアの教育レベルはやはり低いのですが、知識型労働を求められる段階ではまだなく、労働集約型で低賃金を売りにして経済を伸ばしていく段階ですので悲観的になる必要はないです

例えば、以下のASEAN諸国の最低賃金を確認してみましょう。

図1:在アジア日系製造業の作業員・月額基本給

 

カンボジアの労働賃金は、格差が大きいASEANの中でもまだまだ下から数えた方が早く、今後もこの低賃金に目を付けた外資企業が進出してくるでしょう。

しかし...バングラデシュとスリランカ、気になりますね。

 

 

カンボジアも貿易相手は?

次に、カンボジアの輸出入(貿易)について見ていきましょう。

まずは輸入先ですが、中国、タイ・シンガポールからの輸入がメインです。

輸入相手国

 

輸出は米国が中心となっています。ついで英国。品目が織物であることが原因でしょう。

カンボジアの輸出相手国

 

主要輸入品目は以下です。

織物(35%)、機械(9%)、電気機器(5%) 、石油製品(4%)、車輌(4%)

 

主要輸出品目は、以下です。

衣類(50.3%)、印刷物(37%)、履き物(3.9%)、穀物(2.1%)、ゴム(1.3%)

 

主要輸出先の米国への依存が大きく、同国の景気が悪化すると国内の縫製従事者50万人の生活に影響が及ぼすのではとイメージしてしまいそうですが、高級品ではなく、景気が悪化しても「衣・食・住」の衣を担っているので大きな影響はないのではと考えています。

 

貿易額は以下ですが、まだまだ輸入依存であることがわかりますね。

〔輸出〕

11,309(2017年)、 12,736(2018年)、 16,625(2019年)

〔輸入〕

14,793(2017年)、 18,168(2018年)、 20,928(2019年)

 

 

まとめ

カンボジアはASEANで今後成長が期待されるCLM諸国の一角をなす期待の新興国です。

C:カンボジア
L:ラオス
V:ベトナム

 

経済水準は1人あたりGDPが1500USD近辺ということで株式市場ではなく不動産が上昇する水準です。

その点を含めて次回詳しくカンボジアを投資対象としてどう向き合うべきかという点についてお伝えしていきたいと思います。

 

カンボジアは株式投資を行う国として魅了的?政治・経済のファンダメンタル面から分析する。
カンボジアは株式投資を行う国として魅了的?政治・経済のファンダメンタル面から分析する。

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