銀行の窓口で資産運用の相談を行えば絶対に進められ、最近は宣伝や電車の吊革、本屋にいけば目につく投資信託。
個人で資産運用を行おうと思っているかたが、真っ先に投資先として考える先に投資信託があるでしょう。現在日本には3500種類以上の投資信託が販売されています。
しかし、日本の投資信託の実態と管理人の経験から投資信託については買うべきではないと考えています。
今回は投資信託を買うべきではない理由、投資信託に投資しても儲からない理由について、徹底的に解説していきます。
金融庁が警鐘をならす低レベルな日本の投資信託の質
まず、日本という国自体の金融のレベルが低いということを意外と知らない人がいるようです。
日本人が投資に目を向け始めたタイミング自体が欧米に比べて遅いこともあり、現状、正直にいって日本の投資信託の質については疑問を呈せざるをえない状況となっております。
日本の金融界のトップともいえる森信親金融庁長官が、自国の金融商品である投資信託について以下のように批判的な発言をなされています。
日本で売られている公募株式投信は5406本ありますが、そのうちインデックス型株式投信は381本です。これから、複利の利益が得られない毎月分配型の投信、レバレッジのかかった投信、信託期間が短く長期投資を前提としていない投信を除き、ノーロードで信託報酬が一定率以下のものに限ると、積立NISAの対象として残ったものは50本弱でした。」
参照:森金融庁長官基調講演
金融庁の基準が厳しいだけのようにも思われますが、米国の投資信託に対しても同様の分析を行っており、日米比較を行うと以下のような結果となったと述べられております。
「ところが、同じ基準を米国に当てはめてみると、全く異なる結果となります。米国で残高の大きい株式投信については、上位10本のうち8本がこの積立NISAの基準を満たしています。一方、我が国の残高上位30本の株式投信の中で、この基準を満たしているのは29位に一本あるだけです。」
日本の金融のトップが国民を心配して自国の金融製品をここまで痛烈に批判するくらいですから、投資信託の質(=日本という国の金融レベル)は低いと言わざるをえません。
データからも明らかに低いアクティブ型の投資信託
実際の成績はどうなっているのでしょうか?
2020年に発表された金融庁の「資産運用業高度化プログレスレポート2020」を元に分析していきたいと思います。
一言に投資信託といっても二種類存在しています。
日経平均等のインデックスに連動するパッシブ型の投資信託と、インデックスに対してプラスのリターンを狙うアクティブ型の投資信託です。
以下は日本の各分類のパッシブ型とインデックス型のリターンの比較です。
分類 | 5年累積 リターン平均(%) |
5年シャープ レシオ平均 |
全ファンド (パッシブ) |
22.6 | 0.4 |
全ファンド (アクティブ) |
9.7 | 0.2 |
国内株式 (パッシブ) |
40.0 | 0.5 |
国内株式 (アクティブ) |
30.9 | 0.4 |
先進国株式 (パッシブ) |
37.0 | 0.47 |
先進国株式 (アクティブ) |
12.0 | 0.23 |
新興国株式 (パッシブ) |
15.2 | 0.24 |
新興国株式 (アクティブ) |
12.8 | 0.20 |
グローバル株式 (パッシブ) |
32.6 | 0.44 |
グローバル株式 (アクティブ) |
8.2 | 0.17 |
全ての分類で平均点といえるパッシブ型の投資信託にリターンとシャープレシオ共に劣っている結果となっています。非常に情けないですね。
シャープレシオとは1単位あたりのリスクでどれだけの超過リターンを獲得できているかという指標です。リスクとは価格変動幅のことで、シャープレシオが高いファンドの方がより少ないリスクで高いリターンを出していることになります。
→投資におけるリスク指標である標準偏差(ボラティリティ)についてわかりやすく解説する
日本で販売されている投資信託の約9割はアクティブ型の投資信託なのです。インデックスに対してプラスのリターンを狙いながらも殆どの投信はインデックスに負けてしまっているのです。
パッシブ型(=インデックス型)の投資信託は最強なのか?
ではインデックスに連動するパッシブ型の投資信託は最強なのでしょうか?
結論からいうと超長期では非常に魅力的な選択肢ではありますが、10年程度の投資期間だとマイナスになる可能性があることは留意しておく必要があります。
最もインデックスとして注目されている米国のS&P500指数の超長期リターンですが長期的に右肩上がりですね。ただ、ところどころ停滞している局面もあります。

参照:Multiplayers
実際に1928年からの毎年のリターンを棒グラフで表したものが以下となります。

時々20%-40%の大幅な下落を記録していますし、2000年から2002年のように3年連続で大きく下落する年も発生していました。
2000年から2002年の3年間で資産は40%ほど失われることになりました。そして資産が回復していきたと思ったところで2008年のリーマンショックを食らって卒倒した方もいらっしゃると思います。
今はたまたま市場環境が良い環境が続いているので、インデックスを推奨する声が増えてきていますが防御力は以外に低いことは念頭に置いておかなければいけません。
10年間投資した場合でもマイナスになるケースもあるのです。以下は1928年度から各年度から10年間投資した場合の年率平均リターンの推移です。
10年間▲4%の年率リターンを食らうと資産は半分程度になってしまうのです。10年間投資して資産が半減してしまう可能性もあることがインデックス投資の弱点ですね。

ただ、20年投資を継続した場合は如何なる場合でもプラスのリターンを実現しています。インデックス投資をするのであれば20年以上の投資を行うことを覚悟する必要があるのです。

安定的な資産運用を行う上で最良の選択肢は、後でお伝えするとおりできる限りリスクを免れながら安定的にプラスのリターンを積み重ねる投資先といえます。
米国に比べて低いパフォーマンス
では日本の投資信託と金融先進国である米国の投資信託を比較してみましょう。
以下の通り、日本はアクティブ型、パッシブ型共に米国に対して以下の点で劣っています。
- 低い累積リターン
- 低いシャープレシオ
- 高い手数料率
分類 | 5年累積 リターン平均(%) |
5年シャープ レシオ平均 |
手数料率 |
日本全ファンド (パッシブ) |
22.6 | 0.4 | 0.44 |
日本全ファンド (アクティブ) |
9.7 | 0.2 | 1.49 |
米国全ファンド (パッシブ) |
53.13 | 0.71 | 0.18 |
米国全ファンド (アクティブ) |
40.63 | 0.67 | 0.70 |
高い手数料を支払って、低いリターンだと全く割に合わないですよね。本当米国が羨ましいですね。
投資信託を提供する側(証券会社)の考え
投資信託の手数料
投資信託の手数料を見て頂ければ分かるのですが、信託手数料という手数料は預け入れている資産総額に対して掛かってきます。
資産の総額に対して手数料がかかっているのであり、資産の増加分について掛かっているわけではありません。
この為、良い運用をすることではなく、多くの資産を集めることが投資信託を提供する側の利益に繋がるのです。
彼らは投資利回りとして結果の残せる投資信託を作ることでなく、資産を集めることに躍起になっていると言えます。
ここでまた、森金融庁長官の言葉を借ります。
「日本の投信運用会社の多くは販売会社等の系列会社となっています。投信の運用資産額でみると、実に82%が、販売会社系列の運用会社により組成・運用されています。系列の投信運用会社は、販売会社のために、売れやすくかつ手数料を稼ぎやすい商品を作っているのではないかと思います。
これまでの売れ筋商品の例をみても、ダブルデッカー等のテーマ型で複雑な投信が多く、長期保有に適さないものがほとんどです。こうした投信は、自ずと売買の回転率が高くなり、そのたびに販売手数料が金融機関に入る仕組みになっています。」
簡単にいいますと、投資信託を販売している会社の系列の運用会社が運用をしており、顧客目線ではなく長期的に安定した利回りを期待できない複雑な運用手法の商品を、高い手数料を徴収し販売しているということです。
更に、運用成績が芳しくなければ、新しい投資信託をすすめて新たな販売手数料を徴収するというビジネスモデルになっているということを指摘しております。
実際投資信託を販売している側の銀行員の知り合いに話を聞いたことがありますが、投資信託の中身も良くわからず販売していると語っていました。
手数料形態により金融業と顧客の間にどの程度の利益相反が生まれるか
投資信託は、上で説明した通り預け入れた資産総額に対しての手数料となっているので、運用成績が少々悪かったとしても投信を販売している側の収益にはあまり影響がありません。
例えば、1,000万円を預け入れたとします。
翌年の運用成績が+10%の場合とー10%の場合で、信託手数料を2%とした場合に手数料収入がどのように変化するのかを考えて見ます。
(ⅰ) 運用成績が、+10%の場合
預入資産は1100万円に増加し、それにともない信託手数料は22万円となります。
(ⅱ) 運用成績が、ー10%の場合
預入資産は900万円の減少し、信託手数料は18万円となります。
いかがでしょうか、投資している顧客目線での運用成績に200万円もの資産増減の差があるにも関わらず、手数料はたったの4万円しか差がありません。
一方、利回りが▲10%であったとしても、2000万円を預け入れてもらえれば、+10%を出す投資信託よりも多くの手数料を得ることが出来るということが分かります。
このような報酬形態の為、本来追求すべき運用利回りではなく、「いかに脚光を浴びやすい商品を開発できるか」という本質とは違ったところに力を入れているという現状となってしまっているのです。
富裕層と金融業界の人の投資手段
それでは、金融リテラシーの高い層はどのような投資を実践しているのでしょうか。
私が関わっている富裕層の方や、投資に精通しているような東大時代の投資サークルの仲間、外資系の金融機関に勤めている同期の間でよく聞く投資方法は、自身での投資とヘッジファンド(私募型投資ファンド)への投資となります。
自身での投資というのは自分で個別銘柄を選ぶことです。ある程度金融的な知識があり、投資経験が長い人たちは自分で投資を行う人もおり、高い利回りを実現している人もいます。
全く手数料が掛からないので、自信のある方はこの方法が最も効率よく資産形成を行うことが出来ます。
一方のヘッジファンド(私募型投資ファンド)は、高い投資金額のハードルをクリアして金融のプロフェッショナルに運用を任せることです。
これは、時間のない人や、ある程度の資産規模(1000万円以上等)がある人が積極的に活用しています。また、年金基金などの安定的に運用することが求められる機関投資家も積極的に活用しています。
ヘッジファンドは如何なる環境であってもプラスのリターンを出すことが求められるファンド形態です。インデックスは先ほどお伝えした通り、暴落する局面を度々迎えますがヘッジファンドは暴落を抑えながら右肩上がりに上昇しています。
以下がヘッジファンド全体の成績とS&P500指数と全世界株価指数を比べたものです。

S&P500指数や全世界株が大幅に下落する局面でもリターンをだしたり、損失を抑制して安定的な成績となっています。
ITバブルの時は指数が大幅に暴落する局面でリターンをあげ、リーマンショックも指数の半分程度の下落に抑えていますね。
ヘッジファンドは安定的にかつ高いリターンを出すという観点で見た時に非常に魅力的な選択肢となるのです。
以下で日本人の個人投資家でも投資できるヘッジファンドについて魅力的なものを筆者が投資しているものを含めてランキング形式でお伝えしていますので参考にしていただければと思います。
まとめ
以上、投資信託はおすすめできない!投信を買ってはいけない理由を徹底解説、について執筆してきました。
総じて、日本の投資信託というのは金融リテラシーの低い日本国民を食い物にするような悪質な投資商品になってしまっているという状態です。
証券会社や銀行員のポジショントークに騙されることなく、質の良い運用に出会われることを願っています。

資産を大きく増やすにはどうすれば良いのでしょうか?
マザーズの小型ベンチャー株に思いっきり資金を投入。一か八か、株価が急騰を願ったり、信用取引でレバレッジを思いっきりかけてみるのも良さそうです。仮想通貨の草コインも人生一発逆転があるかもしれません。
断言します。上記のような思考の方は一生資産が増えません。そもそも一発の取引で大儲けを狙えるというのは、同じく容易に資金を溶かす可能性も高いということです。そんなものは投資とは言えません。投機と考えても質が低いです。もう少し丁寧に資産の扱い(延いては人生)を考えてみましょう。思考をガラリと変えてみましょう。
大事なのは「リターンが小さくても確実にプラスを、時間をかけて積み重ねていく(複利を生かす)」ことです。世界一の投資家であるウォーレン・バフェット氏も投資で最も大切なのは以下の2つのルールとしています。
- 絶対にお金を損しないこと。
- 絶対にルール1を忘れないこと。

この「損をしない」「プラスリターンを確実に積み重ねていく(複利を生かす)」という重要性を理解したところで資産運用は始まります。好きな企業の株、高配当・優待目当てのどういうわけか資産が増えない運用方法はやめましょう。クラシック且つ質実剛健な資産運用を行なっていくべきです。
私も資産運用歴はもうかなり長いです。そしてこの思考に辿り着き、プラスリターン×複利運用を実施してからの資産増加スピードは圧巻でした。この哲学を実践している、私のポートフォリオに入っているファンドも今回まとめてみました。ぜひ参考にしてみてください。
